相続税が大幅に減らせる「小規模宅地等の特例」のきほん

2025.11.27

相続に際して税金が安くなる特例として「小規模宅地等の特例」という制度があります。

亡くなった方が居住していた住宅の土地について、配偶者や同居親族が相続した場合などに、

330㎡までの土地の評価額を80%減額するというもので、路線価の高い地域ほど評価額が下がる効果があります。


例えば、法定相続人が配偶者、長男、長女の3名の場合で、相続する土地の評価額が8,000万円、

預貯金やその他の財産が3,000万円だったとすると、小規模宅地等の特例が適用できると、

8,000万円の土地の評価額は80%減額され、1,600万円となり、その他の財産3,000万円とあわせても

基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)の4,800万円以下になりますので、相続税はかかりません。


■小規模宅地等の特例

 「被相続人」か「被相続人と生計を一にしていた親族」の住んでいた家屋の敷地(宅地)が一定の要件を満たす場合(=「特定居住用宅地等」に該当する場合)

  限度面積330㎡までの宅地の評価額を80%減額

※「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではなく、親族間において、

  常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、生計を一にするものとして取り扱われます。


■特定居住用宅地等に該当するための要件

 対象の宅地について、以下のいずれかを満たしている場合、特定居住用宅地等となります。

 ①配偶者が取得した場合

 ②被相続人と同居していた親族が取得し、申告期限まで引き続いて保有・居住している場合

 ③配偶者および同居法定相続人がおらず、次の要件を満たす親族が取得し申告期限まで保有している場合

  ・取得した者およびその配偶者、3親等以内の親族、その親族等が議決権の過半数を有する同族会社、親族が理事等となっている持分の定めのない

   法人等が所有する家屋に相続開始前3年以内に居住したことがないこと

  ・相続開始時に居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと

 ④被相続人と生計を一にしていた親族が取得し、相続開始前から申告期限まで保有・自己の居住の用に供している場合


小規模宅地等の特例を適用して基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。ただし、小規模宅地等の特例を適用したり、

その他の特例適用を受けるためには、相続税の申告は必要になります。

また、小規模宅地等の特例の対象になるものとして、上記の特定居住用宅地等の他にも、特定事業用宅地等や、特定同族会社事業用宅地等、

貸付事業用宅地等があげられます。相続財産の対象になる土地等が特例の適用対象であるかどうかの判定や、財産評価など、

まずは弊社までお気軽にお問合せ下さい。初回相談は無料にて対応させて頂きます。





生命保険を活用した生前贈与の長所と留意点

2025.10.22

相続人が、被相続人の契約した生命保険の死亡保険金を受け取ることは、被相続人から相続人に

相続されたものとみなされ、相続税の課税対象とされます。


死亡保険金の相続税の非課税枠

 死亡保険金が遺族の生活の支えとなることを鑑み、500万円×法定相続人の数の金額までは非課税とされています。

 ※法定相続人の数は相続の放棄がなかったものとして計算

 ※養子がいる場合には実子がいれば1人、実子がいなければ2人まで法定相続人の数に加算

 この死亡保険金の非課税枠を利用する生前贈与として、保険金の受取人を相続人にした保険契約を締結し、

 現金贈与にかわり、保険料を負担することが考えられます。現金贈与だと、すぐに使われてしまうといった

 心配をする必要がなく、いざ死亡保険金を受け取る際に、他の相続人の同意を必要とせず、迅速に受け取れることも生命保険の活用の利点です。

 なお、加入する生命保険は、養老保険や定期保険のように期間があるものではなく、終身保険に加入するのがよいでしょう。


受取人は配偶者以外の相続人に

 死亡保険金の非課税の適用は、受取人が相続人である場合に限定されていることにご注意ください。また、そもそも一親等の血族および配偶者以外が

 死亡保険金を含む課税対象の財産を取得する場合には、相続税額が20%増しとなります。この場合、養子になった孫も20%増しの対象となるため、留意が必要です。

 非課税枠を利用した死亡保険金は、配偶者ではなく子が受け取るのがベストです。多くの場合、死亡保険金の受取人は配偶者とされていますが、配偶者には、

 法定相続分と1億6,000万円のいずれか多い方まで相続税がかからないという特典があります。また、子は財産を相続した配偶者が亡くなったとき(二次相続)に、

 もう一度相続税を払わなければならない可能性があります。相続税を繰り返し払わなければならない子のこと考慮して、受取人の変更を検討してはいかがでしょう。


死亡保険金の課税関係

 被保険者を被相続人とした保険契約では、保険料の負担者と保険金受取人の違いによって発生する税金がことなってきます。詳しくは下図をご確認下さい。


被保険者が被相続人であって、保険料を負担していたのが被相続人本人である

場合は、保険金の受取人が配偶者、子、孫いずれにしても

かかってくる税金は相続税となります。


保険料負担者が被相続人本人でない場合は、保険金の受取人によって

かかってくる税金が所得税か、贈与税になります。


また、相続財産が高額で、相続税率が高くなってしまう場合は、

④のような方法をとった方が、税率が低くなる可能性があります。

財産の総額や相続人の数、その構成は千差万別です。

ケースに応じてしっかりと試算をした上で、誰を対象にしてどのような

生命保険にどのような払込方法によって加入するのかを検討しましょう。







相次相続控除はどんなときに適用される?

2025.7.29


相次相続控除とは、10年以内に連続して相続が発生した場合、相続人の税負担が過重にならないように、

相続税から一定額を控除できる制度です。


■相次相続控除の概要

 相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し、

 相続税が課されていた場合には、その被相続人から財産を取得した人の相続税額から一定の金額を控除できます。


■相次相続控除適用の留意点

 相次相続控除の適用に当たっては、以下の4点に留意しておかなければなりません。

 ①被相続人の相続人であること

  財産を取得する者が被相続人の相続人であれば、相次相続控除の適用を受けられます。そのため、養子縁組を行った孫は規定が適用されますが、

  相続を放棄した者は相続人ではなくなるため適用されません。

 ②相続人に対する相続または遺贈であること

  相続開始前10年以内に被相続人が相続または遺贈によって財産を取得し相続税を納付していても、相続人に対する相続または遺贈でなければ相次相続控除の

  適用は受けられません。例えば、2025年に亡くなった被相続人の甲が、2021年に亡くなった叔母から遺言により遺産を取得し相続税を納付していても、

  甲が叔母の相続人でなければ相次相続控除の適用は受けられないため注意が必要です。

 控除できるのは前回の相続で支払った相続税のみ

  相次相続控除は、二次相続における被相続人がその相続の開始前10年以内に発生した前回の相続等によって取得した財産につき課せられた相続税額について

  適用されます。例えば、10年以内に祖母・父・長女(未婚)に相次いで相続が発生し、次女が相続人となった場合、長女が父から相続した財産について課せられ

  納付した相続税額については適用対象になりますが、父が祖母から相続した財産について課せられ納付した相続税額については対象外になります。

 ④相続人でない包括受遺者は適用外

  相次相続控除の規定では、「相続人」と「包括受遺者」を別に扱っており、相続人でない者で包括受遺者となる者が、遺贈により財産を取得する場合には、

  相次相続控除の適用はありません。


以上の留意点を踏まえて、相続が発生したら、被相続人が10年以内に相続財産を取得していないかを確認するようにしましょう。

また、相次相続控除適用の可能性を考慮して、相続税の申告書は10年間保存しておくことが望ましいといえます。

なお、過去に相次相続控除の適用を失念していた場合は、相続税の申告期限から5年以内であれば、更正の請求により相次相続控除を適用することが出来ます。 





財産承継ニュース「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の延長」

2025.7.11


令和7年度税制改正において、結婚、子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、

適用期限が令和9年3月31日まで2年間延長されました。概要については下をご確認下さい。


■結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の概要

 贈与者      ⇒ 受贈者の直系尊属

 受贈者      ⇒ 18歳以上50歳未満の者

 非課税限度額   ⇒ 1,000万円(うち結婚費用は300万円を限度)

 結婚・子育て資金 ⇒ ①挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用、家賃・敷金等の新居費用、転居費用など

            ②妊娠、出産および育児に要する不妊治療、妊婦検診、分べん費等、産後ケア、子の医療費、幼稚園・保育園等の保育料など

            ③児童福祉法の子育て世帯訪問支援事業および親子関係形成支援事業施設に支払うもの

 期間       ⇒ 平成27年4月1日から令和9年3月31日までの拠出

 申告       ⇒ 金融機関を通じて非課税申告書を提出

 贈与者死亡時   ⇒ 死亡時の残高を相続財産に加算

 契約終了時    ⇒ 残高に対して贈与税を課税(一般税率を適用)


手続きについては金融機関の窓口で行います。親や祖父母にあたる方は、金融機関と管理契約を結び、その金融機関にある子や孫名義の口座に、

一括で贈与資金を入金します。子や孫は結婚や子育てにお金を使ったことを証明する領収書等を提出すれば、非課税でお金を引き出せます。

ただ、目的外で引き出したお金や、子や孫が50歳になるなどの理由で契約が終了になった際の口座残高には、贈与税が課税されます。

また、受贈者になる子や孫には、前年の合計所得金額1,000万円以下という所得要件もありますので、ご注意下さい。




最新情報コーナー及び、相続税Q&Aページを公開いたしました

2025.6.30


新たに、最新情報コーナーと相続税Q&Aページを公開致しました。

最新情報コーナーでは、当HPの更新情報や、相続税に関する税制改正情報を、

Q&Aページでは、お客様よりご質問頂くことの多い内容の中から、一般的な相続に関する疑問や、

静岡県東部地域特有の疑問まで、お客様の参考になるような情報を発信してまいります。

定期的に更新をしてまいりますので、是非ご確認いただければと思います。